コース代表教員からのメッセージ
小林光教授(サステナブル環境構成学分野)
建築とは、皆さんの普段の暮らしから、創造的活動、教育、生産、福祉から医療に至る、ありとあらゆる人の活動の器であり、都市とは、その建築と人を内包して総合的に支えるシステムだと言っても良いでしょう。都市・建築学は、場所ごとに異なる文化、暮らし、気候、地形などを生かして、また、地域特有の災害リスクなどに備えながら、機能性に優れ、安心・安全で、災害に強く、美しい都市・建築をトータルにデザインする、工学部の中では、多分ちょっと変わった学問分野です。 『よりよい都市・建築』を創造する人を育てるために、高度なデザイン力を身につける「都市・建築デザイン学」、人間活動と空間特性との関連において合理的な空間の実現を目指す「都市・建築計画学」、建築の安全性・生産性を追究する「建築構造工学」、最小の環境負荷で健康快適な空間を実現する環境や材料、施工を研究する「サステナブル空間構成学」などの研究領域があり、多彩かつ高度な知識とその応用力を身につけることができます。 また研究において、いずれの分野でも世界トップレベルの研究成果を生み出しています。充実した学びと最先端の研究にふれることで、我々と共にあなたの創造力を磨いてください。
研究室紹介
都市デザイン学研究室
窪田亜矢教授、〔大講座制〕市川助教、今泉助手、植田助手
今とは異なる都市や集落、すなわち地域のあり方を構想するために、現場の実態を理解したいと考えています。現場において人から、風景から、関係から、学んでいきましょう。そうやって実践によって得た知見を現場に還すべく、絶え間ない働きかけが創発をもたらすデザイン、存在を支える根を大切にするデザインを目指しています。同時に、社会にも還元すべく、地域と向き合う理論を探究しています。
建築デザイン学研究室
五十嵐太郎教授、〔大講座制〕市川助教、今泉助手、植田助手
建築とアートを含む他ジャンルとの関係を研究し、設計につなげること、国内外の建築展の企画、設営、運営、また南相馬の仮設住宅など、311の被災地でプロジェクトを行っています。リスボン建築トリエンナーレ2007、ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展2008、あいちトリエンナーレ2013、「戦後日本住宅伝説」展、「インポッシブルアーキテクチャー」展、「先史のかたち」展、「窓学」展などに参加しました。
都市・建築理論研究室
五十嵐太郎教授、〔大講座制〕市川助教、今泉助手、植田助手
近現代の建築論・都市論、窓学、家型、天井など建築の部位に注目した調査や広場研究、企業の委託によるデザインのリサーチ、また建築書の編集・制作にとり組んでいます。研究室の成果物として、「日本の現代建築」(2013)、「窓と建築の格言学」(2014)、「世界の美しい美術と建築」(2015)、「図面でひもとく名建築」(2016)、「日本の建築家はなぜ世界で愛されるのか」(2018)などの書籍を刊行しています。
ITコミュニケーションデザイン学研究室
本江正茂准教授、〔大講座制〕市川助教、今泉助手、植田助手
本江研究室では、情報技術が拓く都市と建築の新しい使い方をデザインし、人々が持てる力を存分に発揮し合える環境をつくりだそうとしています。創造的なグループワークの場となるワークプレイスデザイン、情報共有のための空間コミュニケーションデザインなどを手がけ、また専門領域を越えた協働で社会課題を考えるフィールドデザインセンターの活動にも積極的に参加しています。
プロジェクトデザイン学研究室
藤野高志准教授、〔大講座制〕市川助教、今泉助手、植田助手
建築家には、人間社会や自然環境の変化を読み取り、新しい価値観を建築で示す構想力が求められています。藤野研究室では、実際の事例を通して建築意匠の研究を行なっていきます。
空間文化史学研究室
野村俊一准教授
私たちをとりまく都市・建築は、どのようにつくられ、使われ、意味を帯びてきたのでしょうか。本研究室では、古代から現代以前における日本・東洋建築史と、これら建築を保存・再生するための文化財学とを、専門的かつ学際的に研究しています。歴史的建造物の意匠・技法・空間・構造、それらをつくりだした理念・社会背景など、様々な視点から多角的に、かつ東アジアとの文化的な対外交渉関係をふまえながら検討しています。
建築世界遺産学研究室
飛ヶ谷潤一郎准教授
古今東西の建築や都市の歴史を研究しています。具体的には歴史建造物や建築図面などを調査・記録したり、文献を翻訳・註解することで、昔の姿をよみがえらせることが目標となります。そのためには建築のみならず関連分野との学術交流が不可欠ですので、文系・理系といった専門や、国内・国外といった条件にとらわれない博覧強記の人材育成を目指しています。研究室には留学生も元社会人もいます。
都市マネジメント学研究室
姥浦道生教授、荒木笙子助教
持続可能な都市・地域の物的空間を形成するために必要な都市計画・土地利用計画に関して、その計画理論の構築、計画策定技術の開発、その実現のための制度設計やマネジメント手法の構築等に資する研究を、外国との比較も交えつつ行っています。
福祉建築学研究室
佃悠准教授
格差や高齢化などの危機を抱える現代社会において、最低限の生活を保証するために、住まい、および教育、文化、医療、福祉等の公共福祉建築について、人々の行為/生活と建築/地域空間との相互作用に関する研究/実践から、計画の基盤となる理論構築を目指しています。
建築空間学研究室
小野田泰明教授
人間と空間の基本的関係を解明するために、さまざまな調査や思考実験等を展開しています。さらにはそれらを通じ、現代社会が時代に対応する上で必要とする建築型の開発や検証を行っていきます。実践と理論の連結を目指す学際的学問領域です。○ 空間認知に関する研究 ○ 建築発注の国際比較研究 ○ 苓北町民ホール(日本建築学会作品賞:共同受賞) ○ プレ・デザインの思想(日本建築学会著作賞)
[災害科学国際研究所]空間デザイン戦略研究分野
姥浦道生教授
復興都市計画・まちづくりは平時の都市計画・まちづくりの極端な状態という認識のもと、東日本大震災をはじめ各地で発生した災害からの復興の実態と課題を都市計画的観点から多角的に明らかにする研究、さらには連関する平時の都市計画的課題の解決のための研究にも取り組んでいます。
[災害科学国際研究所]国際防災戦略研究分野
村尾修教授
世界中の地域・都市を対象として、将来に資する国際的な防災・復興戦略の策定を目指し、災害による被災地の復興および既存都市の脆弱性評価に関する研究を行なっています。具体的には、被災地の復興モニタリングに基づく復興曲線作成と復興過程の評価、災害に対応した都市・建築空間デザイン、建物被害関数の構築、都市復興アーカイブズ、津波による避難計画などの研究に取り組んでいます。
居住環境設計学研究室
後藤伴延准教授
健康・快適、さらには知的生産性の高い建築環境の実現を目指して、室内外の物理環境に対する人間の反応(生理・心理・行動)について研究を行うとともに、これに基づく環境調整技術の開発や環境設計の方法論に関する研究を行います。具体的な研究内容は、熱中症・ヒートショック防止のための人体シミュレーション、低湿度環境における快適性と健康影響、覚醒状態を向上させる空調手法などです。
サステナブル環境構成学研究室
小林光教授
当研究室は、建築空間の熱・空気・光環境や消費エネルギーを調べ、健康・快適で省エネな建築を実現するための建築環境技術を研究しています。空調設備技術や自然採光技術の研究開発、環境評価手法の開発などを通じて、スマート社会を構成するこれからの建築に、環境の側面から取組みます。また、原発事故被災地の屋内γ線環境や建築計画による放射線防護手法についても研究しています。
地域環境計画学研究室
小林光教授、石田泰之助教
新たな建物の建設や都市化が、都市内の風の流れ・温熱環境・空気汚染等に及ぼす影響を、数値シミュレーションや機器計測により調査・予測・評価し、良好な都市環境を実現するための方法を研究しています。都市緑化や建物表面の日射反射率の制御、建物の形状や配置の工夫による海風の市街地への導入等の都市の温暖化対策に関する研究、さらには、将来気候予測による都市水害、台風等による強風被害への対応に関する研究にも取り組んでいます。
ライフサイクル工学研究室
西脇智哉准教授
持続可能な社会の実現には、人の生活を文字通りに支える建築物を長く安全に、愛着をもって使い続けることが不可欠です。ライフサイクル工学分野では、社会のニーズに応える新たな建築材料・構法や、建築物の非破壊劣化診断方法の開発など、建築物の建設から維持管理・長寿命化までライフサイクル全体に亘る課題について、コンクリートなどの建築材料の視点から取り組んでいます。
リハビリテーション工学研究室
西脇智哉准教授(兼)
建築は時間とともに性能が変化(多くは低下)し、このことは建設時に投入されたコストや技術水準に関わらず避けられません。建築物を長く使い続けられるよう、材料自身が自律的に対処する自己修復コンクリートや、自由なカスタマイズを実現するコンクリート3Dプリンティング、建設当初から組み込むリユースシステムなど、新しい発想による建築材料・構法の研究に取り組んでいます。
性能制御システム学研究室
前田匡樹教授、松本直之助教、Jonathan Monical助教
地震などの災害に対する安全性と安心感を確保しつつ、地球環境に優しい建築や都市の実現を目指す研究を展開しています。研究対象は、高性能な鉄筋コンクリート構造やCLTを活用した都市の木造建築、地震災害の防止、建築のサステナビリティなど多岐にわたります。研究フィールドは地元の仙台・宮城から日本全体、海外まで広がり、国内外の大学、民間事業者、行政など様々な分野の共同研究ネットワークが形成されています。
適応設計工学研究室
高橋典之准教授
地震・津波などの被災シナリオに対して建築物が発揮すべき性能を合理的に設計・評価するための研究(震動台実験、人工知能を用いた画像解析、歴史的建造物調査など)を進めています。具体的には、○ ユーザー指向型耐震性能評価および設計手法の確立 ○ 損傷量評価技術の開発 ○ 耐津波設計手法・耐浪診断法の高度化 ○ 長寿命建築物の維持管理アセスメントなどに取り組んでいます。
構造安全システム学研究室
木村祥裕教授
住宅や園芸用ハウスなど小規模構造物からスタジアム等大空間構造に至るまで、様々な形状、規模、振動特性を有する構造物の風応答とその荷重評価、耐風設計と耐風性能評価、台風・ダウンバースト等突風による強風災害の予測と低減、都市の風環境評価法など、風と都市・建築に関わる様々な開発研究、並びに、オイルタンクの津波荷重と耐津波設計に関する研究などを行っています。写真:宮城スタジアムの風洞実験
材料・構法創生学研究室
木村祥裕教授、鈴木敦詞助教
鋼構造は、最先端の技術で構成される超高層建築や大空間構造、高度な建築デザインを実現できる優れた構造です。一方で、地震大国である日本では、これらの構造物に対して大地震時に被害を軽減し、地震後も継続使用できる耐震設計法が求められています。本研究室では、大地震に対して大空間構造を構成する大スパン梁の座屈設計法や大都市湾岸部に立ち並ぶ超高層建築物の損傷抑制設計法の確立を目指しています。
[災害科学国際研究所] 地震工学研究分野(五十子研)
五十子幸樹教授
東日本大震災を契機として、我が国においてもマグニチュード9クラスの地震動を設計の想定範囲内として考慮しなければならなくなりました。このような大振幅地震動に加えて、超高層建物や免震建物を襲う長周期地震動も対処しなければならない課題となっています。当研究室では、これら大振幅地震動や長周期地震動から都市・建築を守るための革新的な耐震技術を研究・開発しています。
[災害科学国際研究所] 地震工学研究分野(大野研)
大野晋准教授
地域強震観測網に基づく地震ハザード・地盤震動研究、長期構造モニタリングを用いた構造物-地盤系の地震応答研究を実施しています。これらの研究に、リアルタイム地震観測網などの最新の地震観測・情報伝達・機械学習技術を組み合わせることにより、早期地震警報、面的地震動・地震被害推定、建物構造ヘルスモニタリングなどの被害推定・災害低減技術について研究しています。
[災害科学国際研究所] 防災教育実践学分野
佐藤健教授
災害に強いまちづくりとひとづくりのために、都市・建築学の基礎知識をもとに教育学や社会学、経済学、理学、医学など、多様な学問分野との専門分野横断型の実践的研究を行っています。学際融合による新しい研究成果の創造と、その社会実装による減災社会の構築を目指しています。オリジナルな記録データに基づいた東日本大震災における避難者に関する研究にも取り組んでいます。
[災害科学国際研究所] 災害文化アーカイブ研究室(柴山研)
柴山明寛准教授
大規模災害発生時に適切な減災行動が可能な地域社会を目指すために、過去の教訓や、災害発生時に得られるネット社会の情報、そして正確な地震観測や津波観測などから得られる高度センシング情報などを融合した減災対応が可能な支援情報の研究を行っています。具体的には、災害発生直後の被害推定に関する研究や災害対応のための意志決定支援情報の研究などを行っています。